ソニーグループは2026年1月20日、テレビ事業を分離し、中国のテレビ大手のTCLグループと合弁会社を設立すると発表しました。出資比率はTCLが51%、ソニーG傘下でエレクトロニクス事業を手掛けるソニーが49%となるそうです。
僕は、このニュースを見て最初は「ふーん、そうなんだ」くらいに思っていました。たしかテレ東のWBSだったと思いますが、番組内でソニーのテレビの変遷が短く紹介された時のことです。ダンスを踊る人々が映る映像が一瞬流れたのですが、その瞬間、遠い記憶が甦りました。
これまでなら、そこで終わりですが、現在は「ジェミニ」という強力なツールがあるのでダメ元で質問してみました。何回かやりとりをしていると、まさかの当時の映像にたどり着くことができました。
とても懐かしかったです。1990年当時、秋葉原の石丸電気(現エディオン)のおそらく3Fか4Fだったと思うのですが、エスカレーターを昇ったところに当時としては大きなテレビが置かれていて、驚くほど精細な映像が流れていて、びっくりしたことがあります。
現在、改めて調べてみたところ36型の【KW-3600HD】であることがわかりましたが、当時はとても大きなテレビだと思いました。当時のカタログが掲載されているサイトが見つかりました。当時の定価は230万円(税別)でした。
ソニー公式サイトによるテレビの変遷は下記です。
プロモーション映像も衝撃的でしたが、相撲中継も衝撃的でした。例えば14インチの画面でもスマートフォンの画面でも、人は人の大きさ、車は車の大きさと認識されますが、このハイビジョンTVの場合は、吸い込まれるような感じで、箱の中で小さな人が踊ったり相撲を取っていたりしているような、そんな印象が残っています。これは僕だけの印象かなとも思ったのですが、当時の記録を辿ると同じような感想を持った人たちもいたようです。
感想で一番多かったのは「窓を切り取って外を覗いているようだ」という表現だったようです。その他「触れられそうなほど生々しい」「テレビを見ているというより、そこに吸い込まれそうな怖さを感じる」「背景の観客の一人ひとりが、小さな人形のように生きて動いている」といった感想があったようです。
当時の映像の印象を言葉で表現するのは中々難しいですが、子供の頃、工作で作った針穴写真機のトレーシングペーパーに映し出された映像はどこか不思議な映像でしたが、それをめちゃくちゃ高画質にしたような、そんな感じの映像だったかも知れません。
今回、見つけた映像はかなり高画質で、今見ても素晴らしいと思います。画質は「2160p60」まで選べるようになっています。36年ほど昔の映像ということになります。ただ、この動画はプロモーション映像そのものの画質ではないかもしれませんし、自宅の50型のTVに映し出したところでは、驚くほど生々しいというほどではないと思いました。これは時代が進化したのか、液晶とブラウン管の違いなのかは、今となってはわかりません。
ふと思ったのですが、ブラウン管と液晶では映像の見え方が異なるのでしょうか。ブラウン管は物理的に奥行きがありますし、中は真っ暗だと思うので、吸い込まれるような表現が得意なのでしょうか。この映像作品は当時のブラウン管ハイビジョンTVに最適化されているかもしれないので、本来の画質の再現にはブラウン管ハイビジョンTVが必要なのかも知れません。
当時衝撃的だったプロモーション映像は下記です。画質もさることながら、ソニーハイビジョンの世界観が見事に表現された映像作品だと思います。
ハイビジョンTVの画質の素晴らしさをあますことなく伝えている全編は下記です。
バックに流れている【Heaven is a Place in Your Heart】という曲ですが、歌詞も含めて、とても素晴らしい曲だと思います。YouTubeは字幕モードにすると、英文や日本語で、ある程度表示されます。
【Heaven is a Place in Your Heart】(天国はあなたの心の中の場所)
「明日ではなく、今日を愛そう(Love, today not tomorrow)」、「人生は自分の手の中にある(Life is in your hands)」、「地に足をつけ、星に手を伸ばす(Keep your feet on the ground / Reach for the Stars)」等々、印象的なフレーズがたくさんちりばめられた曲です。
ところで、アップルの創業者、スティーブ・ジョブズ(1955-2011)は、ソニー創業者の一人、盛田昭夫(1921-1999)、そしてソニーをとても尊敬していたそうです。
1979年に初代ウォークマンが登場した際、ジョブズは驚愕し、細部まで分解して研究したそうです。「Appleもこういう製品(テクノロジーをライフスタイルに変えるもの)を作るべきだ」という確信は、ここから生まれたそうです。
ジョブズのトレードマークだった黒のタートルネックですが、実は、これもソニーがきっかけだったそうです。彼が1980年代にソニーの工場を訪れた際、従業員が三宅一生デザインのユニフォームを着ているのを見て、「一体感があって素晴らしい。Appleでもやりたい」と考えたそうです。結局Appleの社員には反対されましたが、個人的に三宅一生氏に依頼して、あのタートルネックを100枚近く作らせたそうです。
上記のプロモーション映像のキラキラした世界観は、ジョブズが憧れを抱いていた頃のソニーだったのかもしれません。
