本棚を見ていたら、ヴァチカン美術館特別展(1989年)のカタログを見つけました。もう30年以上前に国立西洋美術館で開催されていた特別展です。カタログのメモ書きを見ると、僕は1989年4月16日(日)雨から晴れの日に、この展覧会を見ています。
この展覧会は、特に大盛況という感じではなかったと思います。僕が行ったのは日曜日のようですが、割と空いていた印象があります。しかしながら、この展覧会は僕にとって印象深い展覧会でした。作者がわからない作品も多いのですが、とにかく強い作品が多かった印象があります。作品の印象を言葉で表現するのは難しいのですが、ここでいう「強い作品」とは、情報量が多い、密度が濃い、心を揺り動かされる度合いが大きい、等でしょうか。これは表面的なものではなく、例えば、繊細な線で描かれたデッサンで「強い作品」もあれば、一見激しく描かれたような作品で「弱い作品」もあるということです。
この展覧会の作品は基本的にキリスト教に関するものですので、キリスト教徒ではない僕には、これらの作品の本当の意味は理解できていないのだと思いますが、それでも見ごたえのある作品が多かった印象があります。作者の気持ちが伝わってくるというか時代を超えて作者と対話できるような作品が多かったと思います。
なんでこんなに強い作品が多いのかについては、よくわかりません。ちょっと思ったのは、昔は、天候不順による不作とか、伝染病とか、人間の力ではどうすることもできないことが多かったと思われますので、そのような生活環境の中で、祈りをささげることは、人々が力強く生きていく上で、たいへん重要だったのかもしれません。そう考えると、これらの作品の多くは、穏やかな暮らしへの強い想いが込められていたのでしょうか。僕の解釈が正しいのかどうかはわかりません。