ジェラルド・ジェンタのG4010という凄まじい腕時計を見たことがあります。1989年発売開始モデルです。永久カレンダーミニッツリピータートゥールビヨンです。現在でもこれだけの超複雑時計は少ないと思いますが、当時は驚異的だったと思います。ケース幅 約34,5mm、厚さ 約13,5mmの小ぶりで厚さのあるケースに、これでもかというほどに細かなパーツが詰め込まれた時計です。44石 21,600振動 部品総数650個で、ムーブメントには、なんとジュネーブシールの刻印迄入っていました。「ジュネーブシール」とは、ざっくり言えばスイス製の最高品質の時計に与えられる認証制度で、ムーブメントの品質について細かな規定があります。精度もクロノメーター位の精度が必要だったと思います。実際問題として精度が出しづらいと言われているトゥールビヨンでジュネーブシール取得というのは凄いと思います。ちなみに、かつてパテックフィリップのほとんどの時計はジュネーブシールを取得していましたが2009年頃を境に「パテックフィリップシール」という独自基準に移行しましたので、ジュネーブシールの権威は以前ほどではなくなってきているかもしれません。
ジェンタはG4010の後に「グランドソヌリ」という更に複雑な時計を発表しますが、僕はG4010のほうが好みです。
G4010は色々なバリエーションがあるのですが、一般的には両面スケルトンです。GERALD GENTA G4010 で画像検索すると少し出てきます。エングレーブ装飾も見事でした。この時計を見たのはもう20年以上前ですが、なんだこれは、という感じで、ちょっと衝撃的でした。今、見るとどう思うかわかりませんが、凄い時計に変わりはないと思います。
ジェンタは斬新なデザインだけでなくムーブメントにも、こだわりを持っていましたので最上級ラインは自社ムーブメントで対応していました。現在、よく耳にする「マニュファクチュール」です。これは、ピエール・ミッシェル・ゴレイ氏の手腕によるところが大きいと言われています。彼はパテックとオーデマの複雑時計部門で働いていたことがあり、1973年からはジェンタで働いている複雑時計の専門家です。
ミニッツリピーターの音色もよかったと思います。当時、割とミニッツリピーターの音を聴く機会があったのですが、いいほうだったと思います。過去の記憶ですが、やはりパテックがダントツだったと思います。パテックは腕時計としては大きな音、澄んだ美しい音色、等間隔でリズミカルなゴングの動作、そして動作音の静かさが印象的でした。ジェンタは音は小さめでしたが、ほかの要素は割とよかったと思います。
当時、ジェンタはカルティエに複雑時計を供給していましたので。W3004751あたりとG4010は少し似ています。
G4010で少し気になる点があるとすればイエローゴールドは少し変色しやすい印象で、あと夜光面積の大きな針は劣化しやすいと思います。針は黒い針のタイプもあったと思います。現在G4010はほとんど見かけませんが、あったとしても程度の良いものは少ないかもしれません。
ジェラルド・ジェンタ(1931~2011)は著名な時計デザイナーで、パテックフィリップのノーチラス、オーデマピゲのロイヤルオークがとくに有名です。時計メーカーとしてのジェラルド・ジェンタは1972年からだそうです。全盛期は1990年代でしょうか。その後ダニエルロートと一緒になり、ブルガリに買収されています。現在では、ブルガリのひとつのブランドになっているようです。メーカーとしてのジェンタは消滅してしまったのでしょうか。
G4010は時代に埋もれてしまった名品でしょうか。